小窓の獣人
獣人で水彩画
小説

『赤ずきん』

「あなたの耳はどうしてそんなに大きいの?」

「お前の声をよく聞くためさ」

「あなたの目はどうしてそんなにおおきいの?」

「お前をよく見るためさ」

「あなたの口はどうしてそんなに大きいの?」

「お前を丸のみにするためさ!」

 あら、こわい。とお婆さんは微笑みました。

「あなたはどうして泣いているの?」

「……群れから…………追い出されて……」

 狼の少年は声を震わせてわんわん泣き始めてしまいました。大きな目から大粒の涙がボロボロと零れ落ちていきます。

「まぁ、それは大変」

 お婆さんは服の袖で涙を拭いてあげました。

 狼の少年の話を聞いたところ、片方の耳の形がおかしくてよく聞こえないという理由で群れを追い出されてしまったようなのです。

 それを訊いてお婆さんはまた「うふふ」と微笑みました。

「それじゃあ、わたしと一緒ね」

「……え……?」

 そう言うとお婆さんは自分のしていた頭巾を手で上げました。

「うわ!」

 狼の少年は短い悲鳴をあげました。

 お婆さんにとってはその反応がとても愉快に感じました。もっとひどい反応をされたのはもうずっと遠い昔の話。驚かれるくらいならすっかり慣れてしまっていました。

「行く当てがないのなら、わたしのお家で一緒に暮らさない?」

 お婆さんは少年の前に、そっと手を差し伸べました。

 狼の少年は少し考えた後、その手をぎゅっと握り返しました。

「うふふ、じゃあ決まりね。お家に帰ったらお帽子を作ってあげましょう。わたし、そういうの得意よ」

 お婆さんと狼の少年は森の中を歩き始めました。

 後に狼さんは言いました。雨上がりの湿った土の匂いを、落ち葉を照らす木漏れ日を、そしてお婆さんのしわしわな手の温もりを、決して忘れることはないだろうと。

 これは私のお祖母と森で出会った狼の少年の物語。

 続きはまたいつか……。

ABOUT ME
yamakikei.
名古屋に在住、イラストレーターになりたい26歳。あと猫にもなりたい。
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